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いまを生きる男たちに似合う、「ハミルトン」というスタイル ④ベンチュラ編

(スタッフクレジット)

写真:宇田川淳(静物)、森山将人〔TRIVAL〕(人物) 文:篠田哲生 スタイリング:石川英治(静物)

 

常に革新を尊ぶアメリカンカルチャーを代表するのが、1957年に誕生した世界初の電池駆動式腕時計「ベンチュラ」。その革新的なスタイルにはいまもなお熱狂的なファンが多く、アクセサリーのような感覚でも楽しまれている。そこで今回は、ファッションと深いかかわりのある3名にその魅力を聞いた。

ケースもラグも左右非対称。前衛的かつ革命的なデザインは、キャデラックを手がけたカーデザイナーのリチャード・アービブによって生み出された。アイコニックなスタイルは、いまもなお比類なき存在だ。

400年以上続く機械式時計の歴史を紡いできたヨーロッパ諸国。その時計産業の中心にあるスイスは、なによりも伝統と正統性を尊ぶ。一方、ヨーロッパからの移民によって時計技術が持ち込まれたアメリカでは、伝統にそれほど固執せず、実用性や利便性も重視しながら時計産業が発展していく。「ベンチュラ」は、アメリカ時計産業の革新性を最も強く表現している時計のひとつ。1957年にデビューしたこの時計は世界初の電池駆動式腕時計であり、しかも人気デザイナーが手がけたケースも個性的だった。この時計に惹かれたセレブリティのひとりが、エルヴィス・プレスリー。彼は映画の撮影でこの時計に出合い、惚れ込み、ホワイトゴールドのブレスレットに自ら交換して愛用した。そうして彼のアイコンとなった「ベンチュラ」は時計を超えた存在となり、彼が影響を与えたファッションや音楽とリンクする“ライフスタイルウォッチ”として愛され続けている。

現代的なスタイルを纏う、オールブラックの「ベンチュラ」

金子ノブアキ(ミュージシャン/俳優)●1981年、東京都生まれ。バンド活動以外に 2009年よりソロ活動も始動し、19年にバンドRED ORCAがスタート。音楽、映像、照明を駆使したソロライブは高い評価を受け、アートや舞台、映画などの音楽制作も行いあらゆるジャンルの壁を超えて活躍中。俳優活動としてNetflix『今際の国のアリス』(佐藤信介監督、12月10日配信)、映画『名も無い日』(日比遊一監督、2021年公開予定)が控えている。

「時計は役柄以外で着けたことがないんですよ。ドラマーなので演奏中に壊れてしまいそうですし、俳優の仕事の場合は、現場に入ったらスタッフが時間を管理してくれますから」と金子さん。しかしモノにはこだわりがある。

「とにかくモノ持ちがよくて、楽器も同じものを長く使っています。だんだんヴィンテージ化していくのが好きなんです。もちろん新しいものを否定する気はありません。40代に入り、年齢的にも折り返し。どちらのよさも理解できるようになったのかも」

年齢とともに考え方も変わってくる。そのひとつが時計だ。

「最近は大人の嗜みとして時計を着けることに興味が出てきました。自粛期間中に自分の時間が増えましたが、空き時間にスマホを見ているとそれだけで時間を浪費してしまう。スマホひとつでなんでもできるけど、それは面白くないよねって思い始めています」

プライベートではほとんど時計を着けたことがなかったという金子さん。今回の撮影にあたり、いくつもの初めての経験があった。

「この時計に合わせるならどういう服がいいだろうなんて考えるのは、新鮮でもあり面白かったですね。黒や白などモノクロのコーディネートが好きなので、こういう黒い時計は使いやすそう。アメリカンカルチャーはいつも身近にあったから、ベンチュラには不思議と懐かしさがあります」

人間はいくつになっても進化も変化もできる。金子さんは年を重ね、時計という新しいスタイルに出合ったのだ。

 

 

スタイリング:上井大輔(demdem inc.) ヘアメイク:高草木剛(VANITES)

ケースやダイヤル、針までブラックで統一。ドットのインデックスのみがキラリと光る。デザインは変わらないが、スタイルが現代的に進化するのも「ベンチュラ」の面白さ。

2000年代から時計業界でも見られるようになった“オールブラック”のスタイルを取り入れることで、オリジナルのデザインを受け継ぎつつ、ルックスはモダンに進化。視認性はやや落ちるが、ダイヤルと針の質感を変えることで針を読ませるなど、細かいこだわりがある。

変わらないスタイルを残し続ける「ベンチュラ」

千葉琢也(編集者)●1978年生まれ。大学卒業後、ミディアムに入社。2004年から17年までファッションカルチャー誌『オーリー』の編集長を務める。09年に『グラインド』、14年に『パーク』を創刊し、編集長を兼務。18年に退社し、新たなメディア『シルバー』を立ち上げる。メディア制作のほかに、企業のクリエイティブディレクション、コンサルティングも手がける。

いくつものファッション誌を手がけ、アートやカルチャーにも造詣が深い千葉さんは、時計にも特別な思い入れがある。

「ベンチュラは少し上のカッコいい先輩が着けていた、僕にとっての憧れの時計。靴や洋服はある意味消耗品ですが、時計には変わらない価値がある。だからこそ歴史を大切にしたいと思っています。極端に言うと、僕は新しいものより長く受け継がれているモノに圧倒的に興味がある」

スマホひとつでなんでもできる便利な時代だからこそ、歴史やストーリーがあるモノに惹かれるのだ。

「ファッションも時計も、なりたい自分に近づくためのアイテムですよね。だから情緒やムードがあるものを選びたい。時計は時間を示すだけのものとして残ってきました。スマホは便利に進化する文明ですが、時計は文化。だから残るんです」

「自分で雑誌や広告をつくっているからこそ、歴史の凄さを痛感させられる。歴史とは、世の中になにを与えてきたかということ。ベンチュラのデザインは、これだけ時間が経っても風化していない。世代を問わずカッコいいと思わせるのが本物ですが、なによりもベンチュラには、変わらずにいられる力があります」

時間の経過に耐えるものだけが、歴史をつくることができるのだ。

「歴史をつくることは簡単ではない。だからこそ憧れるし、そこを目指したい。自分がつくる雑誌や広告も、古くならないものをつくりたい。ベンチュラの存在は、時間に耐えうるものとはなにかを教えてくれる手本でもあるんですよね」

ベンチュラは多くのことを教えてくれるのだ。

ポリッシュ仕上げが美しい、ステンレス・スチールケースの「ベンチュラ」。左右非対称のデザインが腕元のアクセントとなる。

テールフィンが特徴の名車キャデラックをデザインしたリチャード・アービブが手がけた、左右非対称の三角形ケースは、1957年のデビュー以来、現代までほとんど変わることなく受け継がれている。搭載ムーブメントはクオーツ式に変更されたが、駆動源は電池であるためオリジナルモデルの伝統も感じさせる。

現代だからこそ楽しめる「ベンチュラ」のブレスモデル

尾崎雄飛(SUN/Kakkeデザイナー、ヤングアンドオルセン ザ ドライグッズストア オーナー)●1980年、愛知県生まれ。ファッションを勉強するため渡英。2001年に帰国し、大手セレクトショップのバイヤーに。07年に「フィルメランジェ」の立ち上げに参加し、2011年に独立。翌年「SUN/Kakke」をスタートさせた。

高校生だった時にアメリカンカルチャーにはまった尾崎さん。名古屋発祥のヴィレッジヴァンガード1号店で購入した初めての時計こそが「ベンチュラ」だった。

「時計好きになったきっかけは映画。そこから興味が広がり、アメリカの50年代のファッションが好きになりました。しかも、本物を手に入れたいので古着が好き。それが高じて、時計などもヴィンテージが好きになりました」

ファッションデザイナーになった現在は、古着などから着想を得たデザインやモノづくりも行う尾崎さんは、洋服と時計の組み合わせにもこだわりがある。

「ファッションのテイストと年代を時計に合わせるのが好きですね。今回のテーマはフィフティーズ。ベンチュラを着けるなら、その歴史に敬意を払いたい」

本物志向の尾崎さんは、当然ながら「ベンチュラ」のオリジナルを探している。既に、ケース素材やダイヤルが少しだけ異なる50年代後期の兄弟モデル「ペーサー」は入手済みだ。

「復刻モデルはあまり好きじゃなくて、オリジナルを手に入れることにこだわっています。でも最近ショップに来たお客さんが現行のベンチュラをしていて、それも素敵だと思いました。今日着けたこのモデルは、かつてエルヴィス・プレスリーがシルバーケースのベンチュラにシルバーの蛇腹のブレスを付け替えてカスタムしたものにインスパイアされたと聞いています。いわば、これも〝オリジナル〟に限りなく近い現行品なんですね」

歴史的な時計だからこそ、オリジナルにも価値があるし、現行モデルも魅力的。どちらを選ぶのも正解なのだ。

ケースとブレスレットにゴールド処理を行うことで、華やかに仕上げたモデル。ブレスレットは伸縮式で、着脱も容易。

映画の撮影でベンチュラに出合ったエルヴィス・プレスリーは、自分でも同型の時計を購入し、さらにハミルトンの別モデル用のホワイトゴールド製ブレスレットを組み合わせてカスタマイズした。このスタイルを継承したのが、ゴールドケース×ゴールドブレスレットを組み合わせたこのモデル。華やかなアクセントとして腕元を飾ってくれる。

世界初の電池駆動式腕時計「ベンチュラ」は、いまもなおアメリカンカルチャーを象徴する時計として人気を集める。時代を超える革新的なデザインが魅力のライフスタイルウォッチだ。

 

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Pen Online による連載企画
いまを生きる男たちに似合う、「ハミルトン」というスタイル

 

①アメリカンクラシック編

②ジャズマスター編

③カーキ編

番外編:ハミルトンPSR